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魍魎拳

漫画の感想の置き場

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富沢ひとしの漫画について思うこと全部



富沢ひとし先生の漫画を久々に読み返してみました。何度読んでもそのインパクトは衰えることなく、今回も面白いな面白いなと目いっぱい楽しんで読んでいたのですが、何度読み返しても「なんで私はこの漫画を面白いと感じるのだろう」と不思議に思ってしまう、富沢ひとし漫画の面白さとはなんなのかを未だに解明できずにいます。

その理由はたぶん、富沢ひとし先生の漫画には手放しには褒めにくい不安要素というか、好きになれない部分もたくさんあって、でもそれを差し引いて余りある好き要素があって、読後に妙な葛藤が生まれてしまうのだと、思うのです

好きか嫌いかと聞かれれば飛び抜けて大好きですが、他人に勧めるにあたってココが面白い!と良いとこばかり紹介するわけにもいかん、

特に結論めいたまとめもなく、とりとめもなく、私が富沢ひとし漫画について「面白い」と思ったこと「これはちょっと…」と思ったこと、それらを全部吐き出します。



まずは私が読んだ作品の紹介



『エイリアン9』全3+1巻 ヤングチャンピオン
謎の隕石落下以来、不定期に現れ人類を襲うようになったエイリアン、全国の小学校では6年生の児童から各クラス一人ずつエイリアン対策係として選抜し、その退治にあたらせている。エイリアン対策係には寄生生物「ボウグ」が支給され、その攻撃能力を利用してエイリアンの捕獲に当たります。



ヘルメット型で頭に装着します



物語終盤になると来襲するエイリアンは人間をホストとして寄生発展を目論む「ドリル族」による差し金であることがわかり、エイリアンとの戦いの中で成長した児童を(ドリル族)寄生生物「ボウグ」と共生同期させることで安定した寄生を実現するための計画に、主人公たちが利用されていたことがわかるなど。アニメ(OVA?)化もされている、富沢先生の代表作ですね。




『ミルククローゼット』全4巻 アフタヌーン
突然平行宇宙へとジャンプしてしまう奇病『リーズル症候群』が流行し、別宇宙の生物に殺されかけたところを謎の寄生生物「しっぽ族」に助けられた主人公達が、その他の行方不明者の救出のために「Macrocosmic Invincible Legion of Kids」略して「ミルク隊」として様々な宇宙に飛び、異種生物との戦いに身を投じる、という話。

途中から全平行宇宙の生態バランスを統括運営する超的な存在による思惑が明らかになってきて、「しっぽ族」の寄生・吸収能力を利用した宇宙再構築計画が発動、すげえ壮大です。




『特務咆哮艦ユミハリ』全4巻 バーズコミックス
かつて起きた時間圧縮事故の結果大地の大部分が消滅し、九州地方に存在した過去と現在と未来の軍隊が一堂に会し、勝利したものの時間だけが存在を維持できるという、すげぇ言葉で説明するのが難しい、富沢ひとし漫画の中でも特にこんがらがる難解な物語です。
この作品特筆すべきは、富沢ひとし漫画で唯一可愛いと感じたキャラがいることです。




『プロペラ天国』全1巻 ウルトラジャンプ
「普通人間」と「合成人間」が共生する世界、主人公の桜田小鐘と桜田小糸はそれぞれの種族のサンプルとしての役割を課され、謎の古文書的文献「」に記されたシナリオ通りの世界を実現するまで永遠に同じ時間軸が繰り返されていく、てな感じの話。小鐘・小糸のどちらか一方でもシナリオを外れるような理想的でない言動をとれば、即合成人間軍団によるプログラム初期化がなされ、「はじめから」になってしまう、恐ろしい。




『ブリッツロワイアル』全2巻 ヤングチャンピオン
原案・高見広春とあるように、「バトルロワイアル」、主に「バトルロワイアル2」の設定をもとに富沢ひとし風味に改編されたゼロサムバトル漫画。富沢ひとし漫画の定番、うじうじした女子主人公、中盤で闇落ち狂乱バーサーカー化する女子主人公、最終的に人間ですらなくなる女子主人公はきっちり守られているのですが、なんというか、やっぱSF展開、クリーチャー魑魅魍魎乱交パーティー感がほしいというか、あんま面白くなかったかなぁと




『ゆめにっき』Web連載 まんがらいふWIN
こちらクリックでweb連載サイトに飛べます。
RPGツクール発のメンヘラ大好きメンヘラフリーゲーム「ゆめにっき」のコミカライズ、現在第八話まで~で公開されていて、次回最終回のわくわくうひょうです。原作は夢の世界に散らばる12のエフェクトをすべて集めればゲームクリアとなる、特にシナリオといったモノのない自由度の高い探索ゲームで、主にメンヘララな世界観を楽しむ作品なんですが、コミカライズではその世界観への解釈が提示されていて、ゲームに登場するキャラクターにも物語上の役割が与えられていて、原作ゲームと併せて読めば1.8倍ぐらいの楽しみ方ができるように思います。ウボアさんとかセンチメンタル小室マイケル坂本ダダさんとかセンチメンタル小室マイケル坂本ダダさんとかね

ちょっと前までは全話公開されてたんですが今は第一和と再神話のみ公開されてるようで、これは単行本化されるのでは?と期待しています。わっしょい



『エンチャントランド』Web連載 画楽の杜
画楽の社で無料公開中。こちらは最新話まで全部読めます。

現状富沢ひとし先生の最新作となります。第九話まで公開されていますが今のところ大きな物語の動きはなく、しかし毎回衝撃的なインパクト大な絵をぶちまけてくれるので、毎月とても楽しみに読んでいます。特に主人公の持つ空間移動能力、瞬間移動の新しい捉え方が提示されていて、その表現方法は一見の価値あり、とか思います。


『肥前屋十兵衛』とその他読切は、恥ずかしながら読んでいないです。



以下、思うことをひたすらに書きなぐっていきます






①キャラデザインがうーむ
富沢ひとし先生の漫画に出てくる人間、メインキャラクターたちのこの顔



これが全く好きになれなくて、非常に苦手です。富沢ひとし先生は刃牙シリーズでおなじみの板垣恵介先生のもとでアシスタントをしていたそうで、卓越した画力を持っているはずなんですがなぜか人間の顔の描き分けはされていません。男女の見分けも難しく、名前と顔を一致させるのにかなり時間がかかります。

ウィキペディア情報によると、落書きしてたらたまたま可愛らしい絵が描けたのでそのままこの絵柄を採用してしまったそうなんですが、私にはどうもかわいいと思えず、先述の特務咆哮艦ユミハリに登場するこのキャラクターがとてもかわいく感じられます。



感覚がマヒしてるのかどうかもよくわかりません。






しかし富沢ひとし先生の絵がすべて苦手かというとそうではなくて、人外クリーチャーのデザインは一転大好物です。












富沢ひとしクリーチャーの特に好きなところは、その生態が人間の全くおよび知らぬところで確立されている感がビシビシ伝わってくるところで、平行宇宙の生き物といわれてすごくしっくりくる、異物感が最高です。



おふおふおふおふおふ




ベチュ
ミルク隊の制服はなぜかスクール水着


のろのろ





こっそり卑猥な造形ぶち込んでくるところも楽しい。







特に『エイリアン9』『ミルククローゼット』に登場する、人間と共生する寄生生物の生態は物語の面白さの肝となっています。

エイリアン9のドリル族

ドリル族はその宇宙で最も知性の高いと思われる生命体と共生し、肉体と引き換えに強力な攻撃力を与える、数あるエイリアンの中の一種族です。彼らは共生のポストとして人間に目をつけ、訓練用の弱いエイリアンを計画的に人間たちに差し向けて強い強制母体へと育成していく、えげつない生命体です。彼らに強制された人間の意識はあまり人間的であるといえず、人間世界に順応したエイリアン、というかほぼドリル族に意識を浸食されてしまいます。上の画像は体の大部分をドリル族に浸食され、他の強制母胎を求めるようになった主人公の元親友さん。


エイリアン9のイエローナイフ

日向ぼっこするエイリアン「イエローナイフ」、とてもいい表情をしています。

イエローナイフというエイリアンは基本的に無害なんですが外敵から身を守るために、その地域に住む生命体を体内に取り込んで、その生命体にとって最も効果的と思われる妨害電波を作り出し身を守るという、ウルトラ怪獣のような生き物です。作中では人間を取り込み、周囲の人間の視界に人間が映らなくなる妨害電波「ひとりぼっち」を放出し、主人公たちを精神的に追い詰めていました。しかしその電波も破られ主人公たちからガスガス攻撃され、涙を流しながら絶命していくという、本当にウルトラ怪獣的な哀愁を持つエイリアンです。ペンギンっぽい見た目もよいですね。


ミルククローゼットのしっぽ族

しっぽ族も基本的にはドリル族と同様、人間を繭として自分たちの安住できる宇宙を作り出すことを目的としています。このもこもこした再生玉をもとに、周囲の生き物の生体情報をトレースして全く同じ生き物としてコピーすることができます。ミルククローゼット1巻の時点で主人公たちはみんなこのしっぽ族コピーによって再生されていて、ミルククローゼットは人間の姿を盾にしたしっぽ族による異種生命体間の代理戦争となっています。




富沢ひとしの絵は基本大好きだけど、キャラデザとかちょっと嫌いなところもある、微妙に仲のいい友達に対して抱いている感情って感じがしますね





②時間・宇宙などに関する独特のSF概念

私が読んだ富沢ひとし漫画は全てSFモノで、それぞれやや難解な、時間論・宇宙観を題材にしています。平行宇宙を自在に移動する能力、閉鎖的で何度も繰り返される時間軸の中で物語が思いもよらぬ方向に進んでいくのが、とても楽しい。

ミルククローゼットの大人宇宙

宇宙はいくつも存在して母体となる宇宙からまた小さな宇宙が生まれていくみたいな話は読んだことあるんですが、あまた存在する「子供宇宙」全てを養分として一つの強固な「大人宇宙」を作るという発想、初めて出会いました。



エンチャントランドの瞬間移動
五円玉を回している間だけ三次元空間から主人公が脱却し、旧RPGの盤面のように平たくなった世界を歩いて移動する空間移動方式。常々抱いていた、瞬間移動とかワープとかしてる時自分の周囲にはどんな景色が見えるのだろうという謎に、一つの仮説を提示していただいたような感じです。平たくなった世界が戻り始める時の恐怖とか、自分でも超能力の正体を把握してないのも謎が深くて良いですねえ『エンチャントランド』



特務咆哮艦ユミハリの螺旋時間の玉突き事故








時間はらせん状に進行していて、突如時間が進む先が消失し壁に激突、これにより過去と世界が押しつぶされてしまった世界、それが『特務咆哮艦ユミハリ』の舞台設定です。ぶっ飛んでますね

面白いSF設定に毎度毎度感動しています。




しかし一方で、富沢ひとし漫画の主人公たちは外敵と戦うために妙な攻撃の能力を身に着けるんですけど、これがなんというか、「こんな力欲しい!」と思わせない何かが、とてつもない何かが


『ミルククローゼット』主人公
またこの子はうじうじした性格でなかなかに、きつい



『プロペラ天国』主人公

ううん

世界設定、時間・宇宙とかの概念はめっさ面白いなぁと感動するんですが、人間の能力やら性格やらに関しての設定が、なんか、なぜだ!と叫びたくなるような、キャッチーさの無さでまた、ううん




③ぼんやりとしたシナリオ説明

富沢ひとし漫画の多くは、シナリオにおいて新世紀エヴァンゲリオンに非常に似ています。正体不明の異形と突然戦わされることになった若き主人公、世界・宇宙・生態系などマクロな視点での人類を犠牲にする再構築計画の存在とその執行主体の存在、主人公たちにコンタクトを図る敵からの使者、ぶっ壊れた主人公の暴走、シナリオの崩壊、不完全な計画の実行→終焉という、これらの要素は富沢ひとし漫画に良くみられるもので、これだけ見ればエヴァンゲリオンのそれとそっくりで、みんな大好きなカレーハンバーグ定食なんですが、そこはやっぱりエヴァンゲリオンって凄いなっていうか

富沢先生の漫画、難解な時間概念やら宇宙再構築計画とか多用する割に説明がすごく感覚的な言葉で済まされていて、理論立てた謎解明がなく、読者の自主的な理解努力にかなりの部分が委ねられているんす。物語のエンディングにつながる重要なシナリオ、「ミルククローゼット」における大人宇宙形成計画、「エイリアン9」における寄生生物の特性、「ゆめにっき」に秘められた謎、これらは全て回りくどい言い回しで二言三言触れられるだけで、それらがどんな概念であるかは行間から全力で拾い集めても分かるかわからないかのギリギリのところにあって、頭にスパッと入ってこないんす。



これは『特務咆哮艦ユミハリ』で、時間戦争に負けた河童民族の時間が停止するときのコマなんですが、何が起きてるのかよくわかりません。



その点エヴァンゲリオンって「人類補完計画」っていうかなり抽象的でスピリチュアルなエンディングもそうだし、しんじ君の母ちゃんの魂がエヴァンゲリオンの中に取り込まれていることとか、綾波レイという生物の存在意義とか。しんじ君は全然わかんないよ!って言ってるけど読者目線では割と感覚だけでも理解できるラインに、説明が薄くなりすぎずわかりやすくもなり過ぎない、読者の興味と理解への努力を絶妙にあおるいい具合ですよねえ


富沢先生漫画、行間を必死こいて探すのも好きっちゃ好きなんですが、読後のカタルシスがなかなか得られないってのも不安要素の一つなんだろうなと思います。

でも毎話毎話の絵の衝撃はすさまじいし、謎がどんどん深まってこんがらがってくのを楽しむ浦沢直樹漫画と同じ成分もあり、全く理解できずに二周目に突入するときの敗北感、全く好きになれないキャラクターデザインへのもやっとした苛立ち、富沢ひとし漫画を読んだ後の私はなにがなんやらわからない、しかしこんな気持ちになれるのは富沢先生の漫画だけ!

ちょっと言いたいことがごちゃごちゃして話まとまらず、ブログとしてどうなのかとも思いますが、わたしが富沢ひとし漫画について感じていることは全部書きました。総じて大好きです、富沢ひとし漫画。



もえ



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