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魍魎拳

漫画の感想の置き場

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この読切が面白い2013 ~集英社編~


集英社は読切オンリーの季刊増刊やら、新人デビュー読切をまとめた単行本を出してたりしていて、雑誌の中でのインターバルとしての読切というより、一つの作品・商材として扱ってるイメージがあります。



別冊マーガレット8月号『氷のレイカさん』川井榮乃(かわいてるの)

冷静沈着で無表情な女子高生と、明朗快活な男子高校生のカップルという、それほど珍しくはない組み合わせの作品だったんですが、読後感が非常にすっきりしていてよかったです。ヒロインの名前「麗華」と、クールな性格を連想させる「零下」、そして物語のなかでの季節「冷夏」をかけたタイトル。



仏頂面で感情を表情に乗せることが苦手なヒロインが最後の最後で照れを見せて、なかなかに心温まるにやにや青春モノでした。









ウルトラジャンプ10月号『サテライトブルース』(木村聡)


衛星軌道を周回しながら他国の軍事衛星や不審な飛行部隊を迎撃する人造人間とAIのコンビ。軍事目的で開発されながらも不良品扱いされ宇宙に飛ばされた二人が、自由を手に入れるため人間に牙をむくというお話。周回軌道に二人きりという絶望的な孤独と、二人のシニカルな談話が軍人的な哀愁を帯びていて良いです。






ヤングジャンプシード


新人の読み切りばかりを集めた増刊、休刊中のミラクルジャンプ掲載作品の最終話が載ってたり、なんだかよくわからない増刊号でしたね。



『最後の一人』成瀬乙彦


学習・生殖・戦闘能力を兼ね備えたアンドロイドが新しい種族として人類を駆逐し、おそらく人類最後の人間になってしまった男が、まともに会話もできない戦闘用アンドロイドと砂漠を放浪する話。



ほかにも人が生き残っていないかと彷徨い、孤独にがっつり打ち負かされた男が生きるのを諦めようとするも、引き金を引くあと一歩の恐怖と、アンドロイドの純粋な防衛本能がそれをさせない。



辛い。


感情があるのかどうかも分からないアンドロイドに感情移入してなぜか生きる気力を引き起こしてしまう不器用なロボット愛と「地球に一人ぼっち」の要素が非常にツボでした。







アオハルジャンプ2013年9月20日増刊号




『あらしの空の思い出』今井哲也


とある惑星の衛星で作業していた主人公が事故で成層圏に落下、空力加熱で燃え尽きて死ぬかと思いきや重力うんたらイオンクラフトうんたらで、成層圏で奇跡的な浮遊状態に陥る電荷やらなんやらで主人公の浮遊空域を特定することが非常に難しく、救助が間に合わない・失敗する可能性を考慮して、最後の時間主人公の片思い相手との会話が許される。物理学に長けた彼女と奇跡的な浮遊現象の原因を憶測するうちに、現在おかれてる自分たちの状況運命的な何かを感じた彼女が主人公に秘めたる思いを告げるというアンビリーバボーな展開、和みました。



こういう場面で指笛ができる人材は貴重ですね。今井哲也先生はメルヘンチックな絵柄とドギツイ SF理論展開を混ぜ合わせた、読みやすいようで中身が詰まった、変わった漫画を描く人でとても好きです。『アリスと蔵六』が今年のメディア芸術祭新人賞だそうで、めでたい。




アオハルジャンプ同上『ATMの中の男』派手な看護婦

ATMの中でATM業務を手作業で行う、妖怪じみたおじさんの話

ATMの中の密閉された部屋で、小さな小窓から世界をちら見する、他人の消費の手助けをするだけの仕事を何十年も続ける男、金目的で結婚を迫ってくるチャイナ娘に世界への窓をこじ開けられそうになって、ビビッて閉じてしまう。

幼いころからATMの窓越しにその成長を見守っていた少女が強盗に襲われているところを命がけで助けるも、少女は男の顔を見たこともないのでATMの人とは気づかない。

それでも男はチャイナ娘と一緒に外界に出ることはせず、貯金も手放し、自分の存在が許されたATMの中で外の世界を眺める生活に戻っていくという、ハッピーともバッドとも言えない結末にグッときました。金を使って外に出ることへの恐怖と、金を守って居心地のいい閉鎖空間に留まることへの後ろめたさの板挟みに悩むという構図、読んでてヒリヒリしました。





アオハルジャンプ『フロイトシュテインの双子』ひよどり祥子

『死人の声を聞くがよい』のひよどり祥子先生、不死身のゾンビに改造された主人公が邪悪な双子兄妹の実験台としていろんな責め苦を受ける話。

子供の無邪気さと拷問実験という邪悪さを掛け合わせるえげつない手法はホラーでよく見かける気もするけれど、この読切はそのえげつなさがギャグとして笑い飛ばされているので読んでて愉快です。


あとホラー部分には全くかかわってこない主人公の女友達、不幸な目に合うわけでもないのに何故か顔に死相が出てて、作者の絵柄そのものがホラーとして完成されてるんだなぁと感じました。



とても普通な場面、普通の表情なのに、なんか陰があります。





アオハルジャンプの作品はアオハルオンラインで継続掲載されているものもあって、武富智先生の『The Mark of Watzel』とかすごい良いです。

最近無料で読める漫画サイト増えてきましたね、チャンピオンタップとか裏サンデーとか、紙媒体以上に更新日を把握して連載を追うのが難しく感じます。



最後、その他出版社編に続きます。

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