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魍魎拳

漫画の感想の置き場

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王道モノってやつは脳内涙腺をガバガバに拡張するねって話から『美鳥の日々』的な物語が好きすぎて話がそれるまで



「年を取ると涙腺が緩くなる」というのは、人体器官としての涙腺が衰えてガバガバになってしまうというわけではなく


年齢を重ねて積み上げた苦労・悲哀・共感の経験が、似たような場面に遭遇した際により強く情動を揺り動かすようになり


若かりし日には微動だにしなかった事柄にも強烈な感動を覚えてしまうようになるからである、と視能訓練士の方のブログにありました。今調べました。



私も高校生ぐらいまでは感動モノの映画とか見て泣く人の意味が分かんねえとか斜に構えてブーブー言ってたんですが、いつの間にやら、おじゃる丸でちょっと泣きそうになるような雑魚涙腺になってしまいました。

しかし、私はまだ人生経験をミリ単位でしか積んでいない若輩者で、何が私の脳内涙腺をガバガバニしたのかというとやはりフィクション作品を通しての疑似体験の積み重ねによるものだなあと

漫画における王道展開ってやつは異なる世界、異なる作品で繰り返し使われるもので、漫画を多く読めば読むほど王道的展開に触れる機会も増え、疑似体験として蓄積されていきます。


おそらく私の脳内涙腺は彼らによって押し広げられ拡張ガッバガバにされているのでしょう。
私が涙もろくなった原因は、王道的な漫画をいっぱい読んだからなんじゃないか、とか思うんす。





今週刊少年チャンピオンで連載してる『実は私は』は、様々な秘密(実は吸血鬼・宇宙人・悪魔・福の神etc.)を抱えて人間の高校に通うヒロインたちと、うっかりその秘密を知ってしまった主人公がその秘密を頑張って隠し通しながらイチャコラする、所謂王道学園ラブコメ漫画なんですが、



何度繰り返されてきたかわからない漫画的な人間関係図にも関わらず、これまでに何度も読んだことがあるであろう設定にもかかわらず、時々妙にぐっと来てしまうことがあります。

特に序盤から登場している委員長キャラ藍澤渚、主人公に好意を寄せつつメインヒロインに道を譲り身を引いていくさまに毎度毎度大ダメージを受けています。上の表紙の人です。


学級委員長、お堅い学級委員長、なかなか報われない学級委員長…!




ねー いいキャラだよねー

このキャラクターが主人公の周りで一進一退ウダウダやってる様が、やたら私の心をえぐってくるのはなぜなのか。
私に委員長的な人生経験があるわけでもなく、何が私にそれほどの情動を引きおこす原因となっているか探っていくと、それはおそらく井上和郎先生の『美鳥の日々』あたりにあるのではないか、やっぱ漫画を通しての疑似体験にあると思うんすよね。



『美鳥の日々』は毎日喧嘩に明け暮れている地元最強の不良・沢村君に、彼をひそかに慕っている別の高校の女子生徒・美鳥の魂が乗り移り、なぜか不良君の右腕から女子生徒の体が生えてきて奇妙な同棲生活が始まるという、なかなかに時代を感じる漫画で、「右手の恋人」というキラーフレーズとともにアニメ化もされた作品です。

右手から女の子が生えているという秘密を隠しながら高校生活、不良生活を切り抜ける沢村・美鳥


そしてサブヒロインとして美鳥とライバル関係になる学級委員…
学級委員・綾瀬貴子



Going Steadyのロゴが入った服を着ているが、委員長キャラの綾瀬貴子



このキャラクターはサブヒロイン道ど真ん中を進むザ・サブヒロインって感じのキャラクターで、めっちゃ主人公にアプローチしてるんだけど全く気付いてもらえず最後まで報われることがなかった不幸な人です。最終話直前にこの人が主人公に告白して玉砕する話があって、個人的にメインヒロインより好きなキャラクターだったので、連載当時中学生だった私も悲しみが半端なかったです。

『実は私は』に出てくる報われない委員長・藍澤渚が

かつて読んだ『美鳥の日々』の報われない委員長・綾瀬貴子とがっつり重なってしまって、読めば読むほど過去の悲しみがよみがえり、またこの次世代委員長・藍澤渚にも報われない未来がやってくるのかと思うとうへぇ


まあラブコメをたくさん読めばこのような似たようなキャラに出会うことは必然なんですが、『美鳥の日々』はラブコメの王道の王道ど真ん中をパロディ的に進んでいった漫画ゆえに、ほかのいろんな作品を読むときにもドカンと顔を出して私の悲しみを倍増させるブーストスイッチとして今なお機能しています。






ちょっと前にJコミで無料公開された『ななか6/17』って漫画もまた、『実は私は』『美鳥の日々』と同じ王道ラブコメ道を走っている作品で、私はこの漫画『美鳥の日々』の後に読んだのでそこから得られる感動はひとしおでした。

 

読もうぜJコミ!無料公開


不良の主人公とその幼馴染のヒロイン、ヒロインは事故で6歳レベルの知能に幼児退行してしまい、主人公はその秘密を隠しながら学園生活を乗り切るという、『美鳥の日々』にそっくりな設定の話です。

そしてこの漫画には報われない委員長キャラ、雨宮ゆり子というキャラクターが登場し主人公に思いを寄せつつ、やはり身を引いていき、報われない。このラブコメ下位ヒロイン「雨宮ゆり子」というキャラクターについてはねっとりと考察したサイトがあるので、その辺は下のリンクをどうぞ。

サイト
「ホーム」→「漫研究室」→「天元突破!雨宮ゆり子」
このサイトちょっとひくほど深く読み込んでおられます。尊敬します。


『実は私は』藍澤渚
『美鳥の日々』綾瀬貴子
『ななか6/17』雨宮ゆり子

彼女らに代表されるラブコメサブヒロインの不幸は私の脳内涙腺蓄積され、新たなサブヒロイン不幸に出会うたびにその蛇口を数人がかりでぐりぐりコンボ攻撃を仕掛け、緩めていくんす。





そういや内田春菊の『南くんの恋人』も『美鳥の日々』と強い相互作用を持っていますね。
どちらの作品を読むにしても、互いの存在を脳裏に置いて読まざるを得ない


突然体が小人サイズに縮んでしまったヒロインと、それをこっそりかくまう恋人南くんとの不安定な生活。南くん達が直面する問題・悩みは『美鳥の日々』の沢村・美鳥のそれと全く同じ、しかし楽観的に右手の恋人状態を受け入れている『美鳥の日々』に比べて、『南くんの恋人』は小さくなってしまった現状を憂いているので、読めば読むほどもう辛い。



また『南くんの恋人』はかなりえげつないエンディングを迎えるので、私は『美鳥の日々』の美鳥がこんな結末を迎えていたら…と想像してより悲しくなり、そんな嫌なイメージを払しょくするために『南くんの恋人』を読んだ後は必ず『美鳥の日々』のハッピーエンドを見てHPの回復を図っています。

この二つの作品は、二つ合わせると一生楽しめるなぁ
というか、『南くんの恋人』は『美鳥の日々』という解毒剤なしには、なかなか読むのが辛いです。






話がずれて『美鳥の日々』が好きだって文章になってしまいましたが、王道シナリオってのはそれ自体がとても美味しく頂ける優れた食材でありながら、次に来る同種の感動をさらに深いものにする追加効果を持つ、食べれば食べるほど幸せな未来を生むことができる魔法のツールです。

『美鳥の日々』以外にも世の中にはいろんな種類の、それぞれのジャンルにおける王道が存在します。

それらを享受することは安直ではなく、物語に新鮮味を求めるのも良いことですが、無限に増幅する王道の感動螺旋に身を任せると、高校の頃の自分が見たらアホだと思うぐらいにジョバジョバ涙流しながら作品を楽しむことができるので、なるべく斜に構えることなくその波に乗りこんでいきたいなと思っています。

王道を読めば読むほどその作品のキャラクターたちは脳内の涙腺に住み着き、同類の感動にぶち当たった時に脳内涙腺の蛇口をガンガン開いて、私はより大きな感動を得ることができる。過去の同系統の作品を読んだ経験がコンボとなって私の脳内涙腺をズンドコ攻撃してくる、近い作品を読めば読むほど、感動が高まる


喰えば食うほど強くなる、キメラアントの王メルエムのような感じですね。


高校生の時はむやみに感動的な純粋な作品に毒づきまくっていたのに、疑似体験を積みまくると、知らないうちにNHK教育に回帰していたり、あれほど苦手だった『耳をすませば』に涙したり


いろんなフィクションを楽しむうえで、効率よく最大公約数的な人生経験を疑似体験できる王道、やはり最高です。






だいぶ前に金田一連十郎漫画の話書いたんですが、あれもまた作品同士の相互作用が強いですよね。死ぬほど不幸で話が進むにつれてどんどん災厄をしょい込んでいく主人公が、最後の最後にすべての問題を解決して解放され、次作の主人公に呪いのタスキを渡していくのが金田一蓮十郎先生の醍醐味ですね。

特に『二コイチ』~『ライアー×ライアー』へのバトンタッチが生んだ脳内涙腺拡張効果はすごかった。『二コイチ』は母のふりをして息子をだまし女装母・会社員男の二重生活からのカミングアウトと結婚という大波乱の感動物語、『ライアー×ライアー』は女子高生のふりして実の弟と付き合うこととなった大学生姉の話

完結した『二コイチ』における主人公の苦労や大団円で受けた感動は次作『ライアー×ライアー』を読む際にも脳裏にちらつき、感動大爆発です。
この不幸の連鎖が続く限り、私は金田一蓮十郎作品を読むことをやめないでしょう。『ライアー×ライアー』と並行して連載されている『ラララ』も同じ類の話なので、まだまだ楽しいです。



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