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魍魎拳

漫画の感想の置き場

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『PACT』と脳内コンバーター②


①の続き、『PACT』を読んで思い出したことをいろいろ





前述の『PACT』の「約束は呪い」という考え方に触れて、私は北崎拓先生の『このSを、見よ!』のこのシーンことを思い出しました。


 


『このSを見よ!』のヒロインは、両親を事故で失った主人公が親戚に引き取られ離れ離れになることを悲しんで、年の離れた主人公にとっての初恋の人となって幼少期から異性としてのイメージを強烈に植えつけようとします。親を失った悲しみと、少年の初恋に付け込んで自分の存在をかけがえのないものにしようとしたのですね。





その甲斐あって主人公はがっつりとヒロインに恋心を抱くようになり、彼が高校を卒業したころにはヒロイン一直線の純情野郎に成長します。しかしヒロインは難病にかかった祖母の入院費用を盾に、院長の息子から望まぬ結婚を迫られ、あげく院長息子は歪んだ性癖性格の持ち主で、主人公への思いもたちけれず彼女は非常に苦しい新婚生活を送ることになります。



 



その事実を知った主人公は入院費用を稼ぐために身を削って働き、何とかしてヒロインを救出しようと人間性すら投げ捨てて行動します。



そしてヒロインは、主人公ならきっとそうしてくれるだろうとどこか期待してしまっている、彼が身を滅ぼしてまで自分のために動いてくれると確信していて、自分が幼い頃の彼に植え付けた初恋が今の彼を破滅へと誘っている、「初恋は呪いだ」という言葉を発します。



 



『このSを、見よ!』では、主人公とヒロインの初恋の呪いによって多くの人生が狂ってしまい、また彼らの関係もおよそハッピーエンドとは言えない恐ろしい結末を迎えてしまいました。ヒロインは主人公の人生を自分中心の世界に縛り付けてしまったことを後悔する一方で、主人公の自分への恋心に絶対的な信頼を置き心のよりどころにしてしまっている、その相反する二つの心がヒロインの心を引き裂いていくという、北崎拓先生らしい嫌な話です。



 





 





 



ポジティブな意味を持つものが自分にとってなぜか非常に苦しい枷となってのしかかってくる事例ってよくあるというか、私はそういう思考に陥ってしまうことが多いなって思ってて



 



アフタヌーンに載っていたトウテムポール先生の読切『グッドバイ』で結婚を控えた主人公・日吉君が言った「おめでとうって言われると脅迫されてるみたいだ」という科白もそれに近いなぁって思うんすね。



 



付き合っている女性との間に子供ができて結婚を迫られているんだけど、家庭・妻帯者・子持ちという制約を受け入れられない日吉君はひたすら差し迫る結婚という現実から目を背け続けていて、ついには小中学校時代の親友との思い出に逃避するようになります。一番気が合って、自由な考え方を持っていたかっこいい親友あっちゃん



そんな日吉君が同窓会に出席して中学以来久々に親友あっちゃんに再会するんだけど、彼よりもはるかに速いスピードで大人になっていたあっちゃんは日吉君の結婚をさらっと祝福してしまいます。



 



おめでとうという脅迫



 



すでにあっちゃんには子供のころのような夢しか見ない子供っぽさはなく生き方に甘えがありません。一方日吉君は逃げ場のない人生を歩んでいながら最後の砦であったあっちゃんの姿を見て、ついに諦めるというか、大人になることを受け入れ始めます。大人になったあっちゃんからの「おめでとう」を呪いと感じていた子供っぽい日酔い君から、祝福の言葉として受け入れられる大人の日吉君へと変わっていく、そんなやらしい読切でした。



 



 



 



 



自分の何かを褒められたり、何かを祝われたり、何かを期待されると、その言葉がすべて未来の自分が果たすべき責任であるように感じられて、圧死しそうになるということ、ポジティブな言葉が脳内デビル機構を通して非常にネガティブな呪いにかわってしまうこと、よくあります。



 




それに対して何ができるかというと、脳内のデビルコンバータはもはやしっかりと根付いて取り外すことはできないので、変換されたネガティブな感情と上手く付き合っていくしかない。それをやってのけているのが『
PACT』のキャラたちと『グッドバイ』の日吉君です。



 



私もそのようにうまくできればいいのだけれど、難しいですねー



 





 



  


PACT』も、主人公がヒロインと交わした約束が確実に主人公を修羅の道へと導いてしまっていて、今後彼の行動が正解ばかりを選んでいくようには思えない。もし窒素爆弾をすべて解除しテロリストを撃退することができても、彼の体にはすでに大量の合成ヒロポンが撃ち込まれていて体も脳みそもボロボロです。このままでは彼は確実に破滅します。できればバッドエンドは見たくない。

ナギくんがネガティブ変換された約束をネガティブエネルギーでもって見事達成し、幸せな未来を勝ち取るというエンドでなければ、少し辛いです。



 



 



期待をプレッシャーに感じてしまう人間が、プレッシャーに苦しみながら何とか生き延びるという話であってほしい、私自身のセラピー的にこの漫画にはそうあってほしいです。



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