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魍魎拳

漫画の感想の置き場

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『PACT』と脳内コンバーター①



本来ポジティブな意味を持つような言葉、たとえば期待とか、お褒めの言葉なんかをいただいた時に、何故か脳内で悪いエネルギーに変換されて全く別のエネルギーになって外に出てしまうことが、よくあります。そんな感じのはなしです。




ちょっと前にヤングマガジンで始まった『
PACT』という漫画は、突然現れた謎のテロリストによって世界中に仕掛けられた窒素爆弾を処理するため極秘に結成された特殊部隊の戦いを描いた漫画です。物語として非常に緊張感があって絵もきれいでとても面白いなぁと感じるんですが、



 



 



それ以上にこの漫画、出てくる登場人物たちがみんな、なにかしらの約束を守ることを至上の目的として行動していて、またそれが彼らの行動選択にあまりいい意味では作用せず、かなり狂った方向に突き進んでいってしまうのが面白いんす。

作中でも「約束は呪いだ」という言葉が出てくるんですが、彼らは未来をポジティブなものにする約束というものに囚われすぎて、今が非常に不幸になっていることにも構わず、また約束だけを達成すれば他はどうなってもいいとでもいうような、恐しく自分本位な行動をとったりするんですよね。面白いっす。



 



 



主人公のナギこと荒凪君は窒素爆弾処理の要となる天才理系少女マチの世話役を任されている落ちこぼれで、処理作業の際にも精神的に不安定なマチのサポートのために同行します。

かつて不発弾の暴発事故で妹を失ったナギくんはマチのことを実の妹のように思っており、またマチもナギに絶対的な信頼を置いていて、爆弾処理もナギが平和な世界を生きるためにやっています。

窒素爆弾の設置された無人潜水艦内部には無数のホーミング爆弾がちりばめられており、多数の犠牲を出しながらマチはシステムの解除に成功するのですが、彼女また爆弾から逃れられず命を落としてしまいます。護衛隊の人間が次々に爆弾の餌食となっていく中ナギは恐怖で身動き一つとれず、やっと正気を取り戻した時にはマチはすでに虫の息で、そこで彼はマチから呪いの言葉を受けます。



第一話からこの展開の重さで、衝撃的でした。



ナギくんは約束を守れませんでした。 



 



切り札的存在だったマチを失った日本政府は彼女が作り上げた爆弾処理システムを活用、爆弾処理訓練学校の生徒の中から特に優秀な人間を抽出し、彼らにそのシステムを学習させ新たに特殊部隊を編成しようとします。
しかしこのシステムは常人では理解するだけでも一か月はかかるほど複雑なもので、それでは次の窒素爆弾爆破のタイムリミットには間に合わない。
それをクリアするために政府側は合成ヒロポンを用意、このヒロポンは服用すれば痛覚や恐怖心がマヒする一方で集中力が研ぎ澄まされ、超効率的に脳を働かせることができるという優れもので、副作用で体がぼろぼろになるという悪魔的なアイテムです。



 



 



このヒロポンがまた、ナギの心にかかった呪いにひどく作用するんですよね。





心優しくそれほど優れた才能もなかった平凡な彼が、特殊部隊に入ってマチとの約束を果たすために、何のためらいもなく合成ヒロポンを使うことを決断します。



 



 



そしてこの後もナギくんは、爆弾処理班の周りのメンバーすら目的達成のための道具としか見ない程、爆弾処理に対して積極的・盲目的・効率的に全速力で突き進んでいきます。爆弾処理はマチの死、約束を果たせなかったことを思い出させる負のスイッチとしてナギに作用するはずなんですが、その負のエネルギーは彼の脳内で悪魔的に変換されて、エネルギーの大きさそのまま行動力の激しさへとつながっていきます。



 



困難な状況があればあるほど彼らは不健康なネガティブな思考に陥りながら、半ばランナーズハイ的に限界を突破していくさまがすごく面白くて好きなんす。絶望やら悲しみのようなネガティブな感情がプラスのエネルギーになる脳みそって悪魔的です、デビルマンのようですね



 



 



PACT』という漫画は、人間が悪い方向に積極的というか、自分をより精神的に厳しい状況へと追い込んでいくことで異常な力を発揮するという、非常に不健康な漫画なんですよね。好きです不健康。約束に呪われた人間が狂った方向に闇のエネルギーをぶつけて、結果として状況を打開していくというのが、とても良いです。爽やかじゃない行動力、とてもいいです。



 



 




他にも、かつてマチの上司として彼女を爆弾処理の場へと押し出した指揮官・海馬という男がいるんですが




彼もまたナギくんと同じような約束をマチと交わしていて、それが作用してかマチの死後、倫理道徳を完全に無視したえげつない選択を特殊部隊のメンバーに向けて発するようになります


合成ヒロポンの服用を進めたのも彼であり、特殊部隊候補である帽子君に恐ろしい鎌をかけて合成ヒロポンの服用を間接的に強要したり



 


上司である三船教官に思いを寄せていた帽子くん
こんなことを言われたら強制も糞も無いです。海馬はわかっててこんな言い方をしている、やらしいです。





また海馬の友人である護衛隊長との会話も印象的です。



「約束はもっと明るいものだ」と語る護衛隊長、この人なかなかにポジティブな発想でこの作中唯一まっとうに生きていけそうだと期待していたんですが







会話の最後に大きなミスを犯します。この作品の中で、何かを約束することは非常に危険です。



 



 



護衛隊長は爆弾処理中にテロリストにマシンガンで迎撃され、活路を切り開くために水中スキーごと特攻して死んでしまいます。



海馬との会話を思い返し、その約束を証明して見せるために、頭に銃弾を受けながらも生きてテロリストをぶちのめしました。この作品中で何か約束を交わすことは、未来を良いものにするというよりは、未来のために今を犠牲にする呪いなのです。



 



 



 








長くなったので、②に続きます。

 


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