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魍魎拳

漫画の感想の置き場

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『思春期シンドローム』と『R-中学生』

思春期って何だったんすかね、なんかよく思い出せません。


「青春」と「思春期」って違いますよね。私の中では「青春」は思春期に経験した事件・思い出、「思春期」は中高時代謎に多感なってしまう情緒不安定な状態、って感じです。なんで「お前の青春の思い出とは?」と聞かれると、「中学の寮から深夜に脱け出し温泉街に繰り出して、夜の街のお兄さんにからかわれて泣いたこと」とか、割と具体的な経験として思い出すことができるんですよね。


ただ「思春期のお前ってどんなだった?」って聞かれると、あんまりはっきりとしたイメージが浮かばない。今もまだ年齢的には思春期のギリ延長線上にいる気がするし、思春期に抱えていたような細かい悩みも特に解消せずに残っていますが、思春期の私と今の私では心のナイフの鋭さが段違いです。もっと外に向けてとげとげした感情を抱いていたような


なので牙を失った今、あの頃の感覚を完全に思い出すことって、すごい難しいことだなぁなんて思うんす。「青春」と呼ばれる事件が起こっているとき以外の中高時代の日常を、私はどんなこと考えながら過ごしていたのだろう、などと考え、思い出せない。






中学高校時代の精神を思い出すなんて、卒業アルバム見るとかそういう創作物読むかぐらいしか方法ないんじゃないかって思うんですけど、どうでしょう。


私の思いつく方法はそれぐらいで卒業アルバムに写った自分は何かムカつくので苦手、ということで、創作物、主に漫画読むくらいしか思春期マインドを思い出すことができないんす。


でも漫画読んでて「こいつら青春してんなぁ」と思うことはあれど、「こいつら思春期だなぁ」と感じることって滅多になくて思春期の少年少女が織りなす青春事件を題材にした漫画はあれど、彼らの「思春期」そのものを題材にした漫画ってあんまりなくて、それがまた「思春期って何だったっけ?」っていう謎を深めていくのです。



そんな中、最近思春期ど真ん中な漫画を幾つか見つけてちょっとテンションが上がったので、それらの話です。




『思春期シンドローム』赤星トモ




思春期の小さい心のザワつきを「症例」と呼び、一話に十個ぐらいの症例を詰め込んで紡いでいく思春期オムニバスの第一巻です。登場キャラが全て女子高生ということもあって女子高生あるあるみたいなネタも多いんですが、それ以上に高校生の不安定で未発達な精神が引き起こす、思春期特有の思考回路がいっぱい出てくるところがこのマンガの良いところです。



ギャグっぽい話も多いですがたまに自分も当時感じていたようなモヤモヤした感覚をズバッと表してくれる言葉が出てきたりして、そのショックで思春期時代のちょっと嫌な失敗とか友達ひとりなく失くした時のこととか思い出したりが誘発されてとても良いです。



「不安と全能感の中で足掻く彼らは こんなにもこんなにも美しい」という言葉が本当にかっこよい


アフタヌーン連載の漫画なのに絵柄が少年サンデーっぽいのも好きです。







『R-中学生』ゴトウユキコ



タイトルからも伝わってくる思春期感。女性の使用後ナプキンにとてつもない興味を持ってしまった中学生、スポーツ万能容姿端麗だが「最低な男子中学生」にあこがれる野球部のエース、登場する男子中学生達は全員糞みたいにどうでもいい悩みに真剣に悩み苦しんでいます。一方女子キャラはというと男子から性的な視線を受けるようになったことに気づき、人間の性の汚い部分に触れてこれまためんどくさい悩みをかけています。





初めの方は登場人物毎の細かい悩みと、社会とのずれに苦しむさまがハイテンションで描かれていて、懐かしいような腹をえぐられるようないた気持ちい話が続くんですが、最終章で先述のナプキン君のお下劣趣味が学校中に広まってしまい全体集会、クラス会、不登校という、中高生が最も盛り上がり且つ最も恐れる「吊し上げ」事件が起こります。友人関係が壊れてしまう恐怖、社会からはみ出してしまう恐怖、思うとおりに世界が動いてくれないことへの絶望など、これは誰もが思春期の頃感じていたものなのではないかと思います。

最終章では主人公伊地知君の性的嗜好を受け入れられない人間と、理性的に受け入れようとする人間と、「グロッ!なんでこんなんで勃起すんの!?伊地知スッゲェー!!!!」っていう糞バカ男子中学生っ達の戦いが繰り広げられるんだけど、この話は「青春モノ」としても「思春期モノ」としてもすごく面白くて、私はこの漫画大好きっす。



この2作に共通して描かれていることは、少年少女達の中で渦巻く万能感と現実との乖離、そしてそんな上手くいかない思春期の苦しみが大人の目には全て輝いて見える、ということ

『思春期シンドローム』に登場する若手男性教諭は、自分たちが今も最も幸せな時間を過ごしているということに自覚がない女子高生たちに、軽い嫉妬を抱いているシーンがあります。

『R-中学生』はタイトルからわかると通り、中学生(高校生)以上の年齢の第三者の視点で描かれており、物語を補足するようなモノローグがありません。感想書きながらいつの間にか私もその視点でこれらの漫画を読んでいることに気づき、自分が思春期をとうに脱け出していたのだということを実感しました。






他には安永知澄『やさしいからだ』とか阿部共実『空が灰色だから』なんかも、思春期の少年少女達のいら立ちを描いた同じ系統の漫画として挙げられます。これらの漫画はみな読後感が似ていて、懐かしくも恐ろしい。



青春の思い出だけでなく、思春期の思考や悩みを思い出してみるのも一興、えぐみがあります。





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意味もなくメリケンサックを学ランに忍ばせたりパンチ力強化のために握力を鍛えようとしたり、ブレザーの袖から手を出さずに可愛い感じにしてる女子高生全員を呪っていたり、自分以外の人間は大した悩みを抱え図に生きていると確信していた中高時代を終えて数年、私は今後さらに年を取りそんなとがった精神を忘れ去ってしまうでしょう。



そのたびに私はこれらの古文書のような文献を発掘しては解読し、過ぎ去りし思春期を思い出して懐古的な感傷に浸ったりするのだと思います。思春期懐かしいっすねぇ。






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