「ローン・レンジャー」を観てきました。
西部開拓、先住民と大陸横断鉄道とまさに王道アメリカ映画といった感じですが、ひょうきんでコミカルなキャラクターと巧妙な場面転換、入り組んだバトル展開、王道の楽しさを極限まで高めたような、とても良いエンターテイメント作品でした。
まぁ原作との比較とか、作品内の法と倫理観と市民統治二論に関する考証とかは置いといて、個人的見所の義足ビッチ姉さんについて
19世紀末、西部で建設が進められている大陸横断鉄道、その最前線で線路の敷設作業に関わる作業員とその駐屯地…肉体労働に携わる野郎が集まる土地には当然、歓楽事業がついてきます。
物語中盤から出てくる仕込み義足の姐さんは「ダンス酒場」を女手で取り仕切るやり手。踊り子がステージやフロアを舞い、客は気に入った女性を見つけては金を払って致すという、グレーな水商売のお店を経営しています。
グラマラスな肢体に燃えるような赤毛、源氏名か本名か彼女は「レッド」と呼ばれています。
かつては踊り子として名を馳せていたらしいが、とある無法者の手にかかり片足を失った過去を持ってます。その無法者がローンレンジャーとトントの共通の仇だったりして何かと協力してくれるんですが、そんな事よりこの義足ですよね。
曰く象牙でできた雅なデザインの義足は大腿部から右足まるごとのサイズで膝関節も付いており、極めて生身に近い外観をしています。その美しさはトントが触りたくなるほど、堅物の騎士団大尉殿もムッツリ心を駆り立てられるほど。
そしてなにより義足に仕込まれた、このギミック
予告編1分10秒~
超かっこいいじゃないですか。まさか19世紀後半にこんな技術があろうとは、004もビックリですな。もう時代考証とかどうでもよくなってきますね。
二時間半の内ここ含め2回、10分ぐらいしか出てこないんですけど、このビッチ姐さん見れただけでこの映画観た価値あったなぁって思います。
「かたわビッチ姐さん」って、もう言葉だけでも凄い力強さがありますよね。生まれや育ちの不遇と正面からぶつかって生き延びている生命力の塊みたいな人間だと思うんす。
現実に水商売に携わる女性を見かけると早歩きで逃げてしまう私ですが、物語に出てくるビッチ姐さんにはガッツリひかれてしまいます。
特に、かたわビッチ姐さんってこともそうなんですが、「ローン・レンジャー」のレッドと「EDEN」のヘレナ・モントーヤはとても似ているというか重なる部分が多くて、映画を観ながら「EDEN」の方を思い出して泣きそうになったりしてました。
「EDEN」はサイボーグ技術の発展した近未来を舞台にしたSFノワール漫画なんですが、ヘレナ・モントーヤは南米で軍人相手に流しの水商売をしていて、その後都市部で売春宿に入り身寄りのないやつやら訳ありの娘の世話をしたりする姉御気質のビッチさんです。
気性は荒いが情に厚いという素敵な王道姉御なんですが、麻薬組織と暴力団の揉め事に巻き込まれた売春婦を助けようとした事で暴力団から目をつけられ、リンチに遭い片眼・片耳を失います。
しかしそれでも商売は辞めずに現役で働き続け、常連客に見初められ結婚するという、まぁ力強い女性キャラクターです。
映画とは全く関係ないんですが、水商売、姉御、仕込み義足という美味しい要素満載のキャラクターを眼前にして色々と思い出したりその魅力を再確認したりしました。
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ところで、西部劇ってコルセット姿の女性が貧富問わず結構出てくるんですが、大概おっぱいがすごいことになってますよね。漫画かアニメかみたいな勢いで、まるで宙に浮いてるかのごとく服からはみ出してます。調べてみたらwikipediaにこんなことが書いてありました。
―以下―
胸部下部よりウェストにかけてのラインを補正する役割を持ち、ヒップの豊かさの強調と対比的に、胴の部分を細く見せた。
17世紀、女性の服装は胸を強調するようになり、コルセットで胸を押し上げるように変化していった。
19世紀には、ブルジョア階級や労働者階級の女性もファッションに関心をもつようになり、コル セットを着用するようになった。
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私のコルセットの理解は第一段まで、腰を細く見せるために肺から空気をすべて吐き出してまで侍女数人がかりで締め上げるコルセット
19世紀以降のアメリカでは寄せて上げるアイテムに変容してたんですねぇ。
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(欄外)
ジョニーデップの西部劇って「デッドマン」でもやってるんですよね。
「パーマネント・バケーション」とか「ストレンジャー・ザン・パラダイス」とかのジム・ジャームッシュが監督した映画です。
「ローン・レンジャー」が地方検事とインディアンのコンビなのに対して 、「デッドマン」は工場経理とインディアン。似てますね。
無実の罪(売春婦と情夫の殺害、ここでもコルセットビッチ姐さん)に問われ賞金首となったジョニーデップが、半死半生の傷を負いながら名も無きインディアンと共に追っ手から逃げる逃走劇。物語中盤からはジョニーデップの容態が悪くなり死んでるのか生きてるのかもわからない朦朧とした意識の中、魂の救済にまつわる話が進められるスピリチュアル・サイケ西部劇です。
そういや主人公がインディアン風のフェイス・ペイントするところも一緒すなぁ。
BGMがニール・ヤングのギター演奏、何故かイギー・ポップが薄汚い追い剥ぎ役で登場するという、アメリカンロック好きにとっても嬉しい演出があります。
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余計な話を色々と挟みましたが、とにかく「ローン・レンジャー」は面白かったです。「パイレーツ・オブ・カリビアン」と「ダイ・ハード」を一緒に観たような満足感でした。
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