夏だ!
お盆だ!
終戦だ!!
お盆は死んでいった人間の魂が現世に戻ってくるスピリチュアルなOB会みたいなものですが、私は未だ幽霊なるものをこの目で観たことがありません。そして「幽霊を見た!触った!」と言う人も見たことがありません。本当にいんのかよ?と疑ってしまうこともあります。
霊の話になると「幽霊を信じるか、否か?」っていう質問を投げ掛けてくる人がいますが、でもそれはあまり本質的な議題ではないんじゃないか?なんて思うんす。
「幽霊を信じるor信じない」って大して問題ではなくて、重要なのは「実際に幽霊的な物に遭遇したときにビビるorビビらない」だと思うんですよ。「不可解なものを恐れるか、否か」ってことこそが、幽霊いるいない問題の肝だと思うんす。
幽霊が目の前にズドンと現れてしまったら、そいつが幽霊を信じていようがいまいが関係なし、結局ビビってしまう奴とビビらず対処する奴の二択になるはずなんですよ。
ビビらず立ち向かう浦飯幽介になれれるか、ビビって逃げるプーアルになるか。
ホラー映画で「怖がることはないさ、風で窓が空いただけだよ」なんて言いながらタフガイを演じる青年は大概真っ先に化物に遭遇してビビってるうちに殺されるし、本当は不可解なものを恐れる心を持っているのにそれを隠し否定する人間は、結局それを暴かれて死ぬんす。
子供であろうと大人であろうと不明瞭で予測不可能な闇領域に感じる不安は解消し得ない感情であって、頭のなかで本能的に抹消された不安が眼前に叩きつけられることを、人は嫌がる、恐がるはずなんす。
それこそが「幽霊を信じるか?」という問いの先にある、真に懸念されるべき喫緊の問題…な気がしてます。
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ちなみに、もし眼前に幽霊が現れたら、私はきっと全力でビビります。
でも私は幽霊はいると信じています。ホラー映画は好きですがお化け屋敷は超苦手、幽霊を信じ憧れつつ死ぬほど恐れています。好きと恐いは同居します。
実際に出会うのは御免ですがフィクションの世界を通じてそれを見るのは好きで、やはり恐ろしい幽霊や妖怪が出る漫画を好んで読みます。
私がフィクションの幽霊・妖怪の類いを見るときに気にするポイントは主に2つ、
①バックボーン
②存在目的
です。
①バックボーン
なぜバケモノがこの世に生まれてきたのかというバックボーンの有無がかなり重要なポイントです。発生過程が明かされると、奴等のなかの不可解だった領域が幾分解消され理解しうるものとなり、恐怖ではなく理性でとらえることができるようになります。またそのバックボーンには化物退治のヒントが多分に含まれているため、解決の糸口が見える安心感を読者にもたらします。
例えば「ムヒョとロージーの魔法律相談所」に登場する悪霊は人間由来のものが多く、その怨み心残りを解説するためにしばしば生前の回想が挟まれます。
そして単なる幽霊退治にとどまらない魂の救済を達成し、ひとつの話が終わる、という型をとっています。哀しいけど良い話。
最近やたら涙もろくてムヒョロジは読んでて辛いです。
創作物に登場するあやかし化け物達は、その邪悪な性質ゆえにバックグラウンドから発生過程の注釈をつけられることが多く、社会悪が産み出した産物として間接的に世間の無情を批判する風刺物となるのが定石です。
化物の過去を知ることで感情移入の余地が生まれるしはっきりとした異物感は薄れていき、読者としてめ恐怖を緩和することができるので、有難い演出でもあるんすね。
②目的
一方、この世ならざるものがわざわざ現世に残っているからには、存在理由や目的が彼らにはあります。
書かせろぉぉぉぇ
「タケヲちゃん物怪録」
モンスターズ・インクみたいなノリ
人を驚かせると出てくる「陰の気」を食う妖怪たちのお話
取り敢えず命の危険はないことがわかります。
「鬼斬丸」
この少年、こんなこと言ってますが、本当は鬼を斬り尽くして人間になることを目指す鬼の一種です。
見方かどうかはよくわからんが、とにかく鬼を退治してくれる存在らしい、ということがわかります。
他の鬼は人を喰うために恩を売ったりいじめられっ子に取り入ったり、あの手この手で近づいてきます。こいつらは敵だとわかります。
まぁ怨恨とか嫌がらせとか人が発する邪気を喰うとか、この辺わりとパターンが決まってて、異形のものの存在理由は暗黙の了解として語られないこともあります。が、化物たちの目的は「人間に害をなすこと」であることが多く、被害を受ける人間としては化物たちの目的はとても気になる事柄なのです。
超次元のものに納得のいく解説を加え、理解可能な同次元のものに落とし込み、退治する。これにより恐怖を解消、平穏な日常を勝ち取り、安堵を得る。
読み終えたあとにはほんの少しの恐怖が残るばかりで、そのわずかな恐怖も「取り敢えずこの悪霊はムヒョが退治してくれたから私のもとに現れることはない、大丈夫だ…」と考えることで解消されます。弱点も素性も割れてるし、自分でも対処できそうな気もします。
私が幽霊・妖怪退治ものを読むのは、この安堵を得るためだと思うんですよね。
これは、人が悲劇や残酷なニュースを好むことにも似ています。
平穏な日常、生の素晴らしさを実感するために死の話を読み聞きする…
恐怖が自分に及ぶことがないと安心するために、フィクションの化物を視聴するんす。
すげぇ話が右往左往しましたが、①バックボーンと②目的が明かされた幽霊・妖怪って、人間臭くてあんまり怖くないよね、ってことが言いたかったんです。
でも、私が恐がっている幽霊・妖怪ってバックボーンも存在目的もわからない謎の化物のはずで、退治ものの漫画にはそういう得体の知れなさがなくてちょっと違うなぁなんて感じるんです。
「幽霊妖怪退治もの」と「恐怖もの」は違うな、と
「魔法少女オブジエンド」
こ、恐…大丈夫、こいつらは現実世界にはいないから大丈夫…!私は今安全!!
いややっぱ恐い…だってこいつらの素性も目的もさっぱりわからないんだもの
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私が幽霊・妖怪に求めるものは安堵だけではなく、やはり救いようのない恐怖を感じたいがためにそれを読むこともあるんす。というかそっちの方が欲しいときがあるんすよね。
そしてそれは「幽霊」「妖怪」ではなく、名前がつけられる前の段階の、「得体の知れない不安」であったりします。
少年チャンピオンの「不安の種」は、日常生活で人間が感じるふとした不安やざわつきをテーマにした漫画で、数々の形容しがたい何かが登場します。
この漫画は日常のささいな恐怖を抉り出すことをテーマとしていて「日常に潜む戦慄」みたいな宣伝をされることが多いんですが、この漫画の恐さの理由だけではなくてですね
注目すべき点は、これらの得体の知れない異形なもの達との遭遇が描かれるのみで不安の解消がなされないこと、そして一切の解説もされないことです。
なぜ彼らが存在するのか、何が目的なのか、このあと人間はどうなってしまうのか、ほとんど描かれることがありません。なので、一話読み終えても恐怖が消えずに現実世界にしっかり引き継がれます。
「いったいこいつら何者なんだ?」という恐怖、「こいつら誰にも退治されてないし私のもとにも来るかもしれない…」という恐怖
「不安の種」は人間が感じる恐怖や心のざわつきを「幽霊」「妖怪」などとジャンル分けすることなく、ただただ恐いものとして描いているところが、肝だと思うんすね。
洗面所で顔を洗いながら「ふと目を開けたら目の前に化物がいたりしないだろうか…」と感じたりしますよね。それは「霊」とか「妖怪」とかじゃなく「不安」という感情でしかなくて、それこそが私が恐怖を感じる対象なんだなぁって思うんすよ。
心霊写真も、なにも語りかけてこないし説明もできない不可解さが恐いんだと。
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まぁでもやっぱり、幽霊やら妖怪やらには出てきて欲しくないし、出来ればその素性や目的を理解していたいし、あわよくば退治されていて欲しいと思います。
漫画に出てくるような化物達を前にして正気でいられる主人公達を羨ましく思うし、彼らと同じ立場で化物達と対峙できることは幸せだなぁなんて感じてます。
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