別冊少年マガジンで連載してる『不死身ラヴァーズ』って漫画が好きで、9月9日に単行本が出るのをすごく楽しみにしています。
講談社公式サイトで第一話が無料で読めますぞね。是非読んでから読んでよね。
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主人公・甲野は長谷部という女の子が好きで、その子に好かれるために全力で彼女にアピールします。様々な困難を乗り越え、主人公の努力が報われ晴れて長谷部と両思いに…と、ここまでは普通のラブコメなんですが
主人公と長谷部が両思いになった瞬間に、なぜか長谷部は消滅してしまいます。本当に突然、残酷なほどにボシュッと消えてしまいます。クラスメイトに聞くと「そんな奴はもとからいない」と言われ、主人公だけが長谷部のことを覚えている。
長谷部はこの世から完全に消えてしまったとわかり、主人公はボッコボコに傷つきます。
ところが、長谷部のことが忘れられず悶々とした日々を送る主人公のもとに消えたはずの長谷部が現れるのです。同い年であったはずが、何故か後輩となって
いろいろ不可思議な点はありますが、そんなことより長谷部が好きでしょうがない主人公はめげずに再び長谷部に全力で接近
そして晴れて両思いになったかと思うと、また長谷部は消滅…こんなループがエンドレスに続いていきます。
時には大学生の姿で、時には中学生、前回は小学生の姿で現れた長谷部に主人公は突撃してなんとか親密になり、そしてやはり、その瞬間に長谷部は消滅します。
私がこの漫画好きなのは、悲劇的な話に心ひかれるからってのと、目の前で何度も想い人が消滅するダメージに耐えられる主人公のタフさに感動するからなんすね。
ひとつのエピソードの始まり、長谷部が主人公の前に現れた時点で、主人公には結末が見えている。それなのに主人公は「何度も長谷部を好きになれて嬉しい!」と強靭な精神力で耐え、消えてしまった長谷部が再び自分のもとに現れるのを待ち、そして突撃します。
心臓を抉られるようなダメージを受けながらも何度も蘇る主人公の超人っぷりをして『不死身ラヴァーズ』と表しているんでしょう。
ダメージを受けるごとに、次の長谷部に出会ったときの主人公がよりハイになっていってる感じも、まさに不死身のサイヤ人ですね。
悲劇の主人公なのに「何でこんな目に合わなきゃならないんだ!」と世界を呪う素振りを全く見せない甲野君は本当に良いやつだなぁ、と思って毎回全力で応援しながら読んでるんですが、なかなか報われません。
ただ長谷部さんが消えずに甲野君とくっついちゃうと漫画として終わっちゃうのでそれも寂しいなぁとか、なんか一番酷いのは彼らの悲劇を楽しんでる自分なんじゃないかとか思ってしまうこともあるんですが、まぁ読んじゃうんですよね。
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感想かいてて気づいたんですが
この『不死身ラヴァーズ』って、話の構成は手塚治虫の『アポロの歌』と全く一緒なんですよね。
『アポロの歌』は異性間の愛情行為に並々ならぬ憎悪を抱く少年・近石昭吾が、神っぽい存在から「決して叶うことのない悲恋を何度も経験させられる試練」を課せられ、しこたま辛い思いをするって漫画です。
ヒロイン役は微妙に人格や社会的地位なんかが違うんですが、全て同じ顔をしたほぼ同一人物として描かれています。手塚治虫の女性キャラってほとんど同じ顔な気もしますが、まぁそういう設定です。
『ふしぎなメルモ』『やけっぱちのマリア』と並んで三大性教育漫画なんて言われてますが、他の二つと比べるとかなりスパルタな性教育
『不死身ラヴァーズ』は悲劇的な結末にもめげない甲野君の明るさと、消えてもまた長谷部はちゃんと復活してくれるという、ギリギリポジティブになれる要素のある漫画です。
しかし『アポロの歌』の主人公・近石昭吾の場合、想い人が目の前で消えるどころか
撲殺
地割れに
熱泥に
爆死
爆死!
爆死!!
と、トラウマ確定な映像を目の前で見せられて嘆き苦しみまくっていて、およそポジティブになる隙がありません。同じ消えるにしても、ボシュッと一瞬にして消える方が、まだ作者の優しさを感じます。近石昭吾も悲劇の連続で少しずつ丸くなっていって、最後には愛情の偉大さを理解しているような素振りを見せているんですが
手塚治虫先生のスパルタ教育はやむことなく、次なる悲劇に向かって昭吾が歩いていくシーンで、この漫画は完結しています。
ヒロインの悲劇的消滅がループ、ボッコボコに苦しむ主人公いう共通点をもつ二つの作品
寸前でブレーキを掛ける優しさをもった『不死身ラヴァーズ』
負のベクトルにとがった絶対値のでかい『アポロの歌』
どっちの作品が好きかと言われるとすげえ迷うんですが、近石昭吾には永遠に苦しみ抜いてもっと丸い人間になってほしいし、甲野君にはいつか長谷部さんと結ばれて幸せになってほしいなぁと思っていて
同じようなきつい経験をさせられてる主人公でも近石昭吾は間違いなく作者にいじめられているし、甲野君は作者に愛されていると思うんですね。似たような設定でも作者の心の持ちようでこんなにもキャラの印象って変わるもんなんだなぁと、比較しやすい作品だったのでそんなことをミシミシ感じました。
いやあやっぱり甲野君は良いやつだ。
(追記)
『不死身ラヴァ―ズ』が完結しました。
以下、最終話のネタバレ要素を含みますので、ご注意ください。
別冊少年マガジンに最終話が載った際には「第一部完結」と銘打たれていて、8日発売の4月号には完結巻・単行本3巻の宣伝とともに「第2部は寝て待て!」と編集からのコメントが付いていました。
2巻から登場したもう一人の不死身さん・花森さんに焦点を当てた話が始まるのではないか、最終話で攻守が入れ替わった甲野と長谷部の対決がハッピーエンドに向かうまでを描いてくれるのでは、などと期待しています。
特に、甲野君と同じく好きになった相手が消えてしまうという問題に直面している花森さんがボソッと漏らした「双子の兄弟」のこと、過去に消えてしまった3人の相手のことなんかも気になりますね。
第2部!第2部!!早く!!!
で、最終巻・3巻を読んでて気づいたことを一つだけ
甲野君の左目には泣きぼくろが2つあって、長谷部さんの右目には泣きぼくろが一つあります。
甲野君が好きな「長谷部りの」には、右目泣きぼくろが一つあります。
で、『不死身ラヴァ―ズ』第一部の最終章、今度は男の「長谷部りの」として甲野君の前に表れた長谷部君
やはり右目の下に泣きぼくろが一つあります。
たとえ男であっても全く止まらない甲野君、「長谷部りの」という人間を愛する甲野君の尽力は性別の壁すらぶち破り、甲野君と長谷部君は晴れて両想いとなるんですが
今までは甲野君と長谷部さんが両思いになると長谷部さんが消えてしまっていたんですが、ここで二人の立場が逆転します。甲野君の存在がボシュっと消えてしまい、長谷部君だけが残ってしまう。
そしてその瞬間から、ちょっとわかりにくいんですが、元は一つだけだった長谷部君の右目の泣きぼくろが2つに増えているんです。
「長谷部りの」君の右目の下に二つの泣きぼくろが、その姿は消えてしまった甲野君と対照的・対称的です。
この二つ目の泣きぼくろ、どのコマもうまいこと長谷部君の前髪で隠れていて、作者の高木ユーナ先生も意図的にわかりにくくしてるのかもしれません
甲野君の左目にあった泣きぼくろが、今度は長谷部君に移ってきた、好きになった人間が消えるという試練が甲野君から長谷部君に移ったことを表しているのだと、受け取っています。みんな気づいていたことなのかもしれませんが、今さっきそのことに気づいてちょっとテンションが上がったので、追記として書いてみました。
『不死身ラヴァーズ』第2部、早く読みたいですね。
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