フィクションの世界にどっぷり浸かってるせいか、魔術と科学の境界がよくわからなくなることがあります。
魔術はオカルトな存在(悪魔・精霊など)と密接な関係にあって、伝統的な儀式や契約、略式の呪文によってそれらの高次な存在の力を借りる術、という認識です。時代や宗教体系や信仰の対象が変わると仙術・方術・呪術など、術の効果も変わると。
『スレイヤーズ』の魔法体系はまさにそんな感じで、ヒロインのリナ・インバースが使う黒魔法は冥王や覇王などの上級魔族の力を借りるもの。アメリアやゼルガディスが使う精霊魔法はアストラル・サイド(精霊)の力を借りるもので、魔道士の強さの基準は魔力容量と召喚技術に左右される、という魔法観です。
黒魔法は火の玉を飛ばしたり大爆発を起こしたり、精霊魔法は傷を直したり空を飛んだり呪われた存在を浄化したり、およそ人知を越えた力として描かれます。
科学の発展していない時代からこういった非実在能力が登場し始めたのは、人々の需要に技術が追い付いていなかったからだと思うんす。宗教の流行と同じで「どんな怪我でも治せる力があれば…」とか「土を金に変える力があれば…」という実現し得ない願望が、怪しげな術の進行に繋がったんだろうなと。
一方科学は物理・化学・情報技術など最先端技術の総称で、すべての人類が共有する事ができる一方悪用の可能性も無限大、みたいな感じかなって。というか、かつて魔術と呼ばれていたような超自然的な力を実現する技術、っていうイメージがあります。レーザーとか火炎放射とかユビキタスとか
魔術にしても、科学にしても「こんなすごい現象を人間の力で引き起こすことができたらなぁ」っていう願望がもとになって生まれてきた、進歩してきたものなんすよね、たぶん。
『鉄鍋のジャン』って漫画がありまして、SFでもファンタジーでもなく料理漫画なんですけど、そこにこんな料理が出てきます。
秋山式・サンゲタンとは
食べた人間はこうなる悪魔的な料理。
この世にある真っ当な食材をブレンドして人間の神経を操るこの力は、でかい鍋をグツグツ煮込んでる魔法使いのイメージに何か似ていて、この場合の主人公の料理の力は魔術なのか?科学の力なのか?っていうか呪術では?迷います。
まあ、呪術の領域を薬学と生物学の力で解明した、って解釈が妥当なんじゃないかと思います。
こんな風に、フィクションの世界にはかつて魔術と呼ばれていた能力を技術と知識(=科学)で実現してしまっているものが結構あって、科学が発展した近未来SFでもなくファンタジーでもなく、現実世界にも起こりうる超科学を描いた話に出会うことがよくあるんす。
そしてそれは、魔術VS科学という構図で語られることも多いです。
『魔人探偵脳噛ネウロ』に出てくる敵キャラたちは肉体の構造は人間と同じなんだけど、卓越した知恵と技術で魔界の住人ネウロを苦しめました。
アヤ・エイジアは歌で人間の脳に働きかけ自在に操る技術
電人H∧Lは電子ドラッグをばらまいて人々を犯罪に走らせる技術
テラは地学を極めて地盤沈下を引き起こし、DRは治水の技術をいかして都心を水没させようとしました。
特に火を操る犯罪者・葛西善次郎は、マジックに似た巧妙なトリックを使って、さながら魔法のような現象を引き起こします。
人体発火能力ではなく、あくまでトリック
魔人・島耕作
それでもやはり彼らは科学的に解明された技術だけで、魔術を操るネウロに真っ向勝負を挑んでいます。
魔人(オカルト的な存在)
――――VS――――
人間、科学with悪意
高次元な存在であるネウロを、人間が精一杯の進化で追い詰めるっていう流れがとても面白くて好きです。
『スプリガン』
世界中で発掘されるオーパーツやオーバーテクノロジーを軍事利用される前に封印破壊するエージェント、御美苗優の話。
彼の武器は、発掘された古代技術と最先端科学を融合して生まれたアーマードマッスルスーツ
この漫画、魔術・呪術・風水・陰陽道・獣人・超能力・インダス文明など、古今東西あらゆるオカルトパワー体系が肯定されていて、それ駆使する敵を主人公が体術と科学の力でぶっ倒します。
実体化した怨霊なんてものも出ます
「現実世界でこんな話が起きるわけない!近未来SFだ!」とも思うんですが、 陰陽道の使い手であるティア・フラットが印象的な台詞をのべているんす。
神や精霊、果ては宇宙人まで出てくるフリーダムさはありますが、この漫画の世界では魔法と魔術(神・精霊・悪魔)は切り離されて考えられています。
様式や理論体系はあるものの、神や精霊の力を借りる超自然の力ではなく、あくまで自然の法則に則った力として魔法が存在しています。
『スプリガン』の魔法は科学のずっと先を行く超能力として描かれていて、科学はいつかそれに追い付く技術いう位置付けなんすね。そしてそれはスピリチュアルな力を借りる魔術とは対となる存在です。
(超能力>)科学
――――VS――――
オカルト的な存在>>魔術
どちらに属するともいえない古代文明オーパーツを奪い合って、二者が戦ってる、って構図。
『とある魔術の禁書目録』でもこれと似たような対立が起きていて、科学サイドは人間の脳を改造して超能力を引き出すことに成功し、宗教的な様式と儀礼をなぞることでオカルトな力を操ることができる魔術サイドと戦っています。
脳をどういじくればどんな能力が引き出せるのかも、電磁砲やら悪魔払いやらの能力が発動するシステムもある程度解明されていて、『スプリガン』より科学が一歩も二歩も進んだ世界って感じがします。
ただ科学とオカルト魔術は決定的に相容れない存在で、科学が超能力を開発することはあれど魔術のメカニズムを解明することはなさそうです。序盤しか読んでないんでちょっと情報曖昧です。
―――
とりあえず今まで読んできたフィクションからの情報に頼ると、科学は物理法則に従って進化を重ね、かつて不可能と思われていたことを可能にするが、超自然オカルトの力を借りる魔術を解明することはない、ということがわかりました。
雑にいうと科学の領域に無いものはオカルトって感じですね。
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何当然のことを長々と…と思われるかもしれないんですが、私が科学と魔術の領域にこだわるのには人類学的中二的興味だけじゃなく、他にも理由がありまして
「拳法」ってどっちの部類に入るんだろうなぁって、ずっと不思議に思ってたからなんすね。
合理的で効率的な動きを極めるために研究し尽くされたその技術は科学的ともとれるし、中国拳法の多くは道教とか陰陽五行説の教えを軸に構築されててかなりオカルトめいてる部分もあるし…凄く曖昧な存在なんです。
割と身近にあって、超能力的なものに最も近いと思われる「拳法」
後半でその辺、うだうだ考えます。
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