吉野家で牛丼をたべる方法は人それぞれ、汁だく玉クチャラーもいればスロー再生並の爺もいる。
故に「吉野家の牛丼をたべる音」をテンプレ化することは不可能…そんな感じの話です。
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物を食べるときには何かしら音が出ますね。その音は食べ物の食感や人が食べる勢いなんかを表し、それがどれだけ美味いか不味いかを擬似的に聴覚で表してくれるわけです。
文字媒体に出てくる食べる音っていくつかパターンが決まってて、手塚治虫先生の表現を借りると大体「バリバリモグモグガツガツムシャムシャ」って感じのテンプレが使われてます。
でも実際は何千何万種類とある食べ物、食器、食べ方の組み合わせはそれこそ無限大で、上に記されたテンプレートの枠には納まらない音がたくさんあるはずなんですよね。たとえば汁物を金属製の食器で歯の半分抜けた老人がすする音って「ズズズッ」だけではないと思うんす。
そんな事を考えてると、まぁこれは食べるときの音に限らないんですが、ちょっと捻った擬音に出会うと嬉しくなってしまうんですね。またちょっと捻った擬音って、音の質をよく観察した上での表現なのでテンプレ化した文字音より遥かに深く脳に響いてくるんす。「このシチュエーション、この食べ物にはこの音しかないな!」って思える表現に出会えると最高です。
例えば
福満しげゆき先生
妻があんパンを食べる音
もっもっもっ
富沢ひとし先生
小学生が口から卵を産みかける音
アポコ
そして、要はこの人の漫画の話がしたかったんですが
擬音の宝島、福島聡先生の「機動旅団八福神」より
食べる音に時間の流れを感じるというか、咀嚼が進行してる事がよくわかる擬音を使ってます。
バナナ
もまもま
バナナ潰れる
カレー
カツォゥカツォカッ
ベトナム料理
グッパグッパ
とれたて鮮魚
「機動旅団八福神」はSF自衛隊ものなんですが、やたらと飯を喰うシーンが出てきます。
(欄外)
福島聡「少年少女」より
下半身裸で走る男児
タペタペタペタペタペ
「何か物を食べている」という状況を記号的に表すのではなく、そこにあるものを口にいれ噛み咀嚼し時にむせるという光景を生々しく描くことで、登場人物が好き嫌いや食べ方のポリシーを持った、生きた人間なのだということを読者に実感させることができるのだと思います。
ソースのかかったハンバーグが鉄板の上でジュワァァァと美味しそうな音を立てているのに、食べる音が「パクっ」なんて拍子抜けな表現ですげぇがっかりすることとかよくあるんすよ。
「パクっ」でも間違いではないんだけど、「パァッ」の方が「大きく口を開いて食べる人間なんだな」ってことを伝える事ができて音の持つ効力を存分に使えてる感じがするし、噛みついた時にもっと肉汁感ある音がついてきてたりしたら、読んでて楽しくなってくるはずなんすよね。
ミカンで言うならこんな感じ
美味しい音はこっちではなく
こっちのはずで
グルメ漫画の「喰(はむ)」は、ものを食べる時の音をタイトルに絡めて「はむ」って表現に統一してるっぽいんだけど
それは私にとっては非常に辛いもので、他のグルメ系の漫画も味や調理法の説明に比重をおいて音が軽んじられているものが多いように思うので、もっと聴覚に訴えかけてくる漫画が増えればいいのにな、なんて思ってます。
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