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魍魎拳

漫画の感想の置き場

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空腹の味


慢性的にお金がない。
お金はないが、お腹は減る。
そのような状況下、人はどのような行動をとるのか。


一つは貧乏工夫レシピで食を楽しむケースだ。コミックバンチの「貧民の食卓」や、スピリッツの「くーねるまるた」なんかが今最先端であろうか。



(一食100円以内の家庭料理を作る無職の父の話)



(ポルトガルからの留学生のマルタさんが日本文学を読みながら貧乏飯を作る話)

安価で手に入れた食材を調理法の妙によって豪華な料理へと進化させる節約グルメを楽しむ。
金も抑えてご飯も食べれる、最善策に見えるこのコースだけれど、私にはそこに参入するに当たって大きな壁がある。




それは、料理の素養だ。
細かい下拵え作業は苦手だし、なにより料理自体あまりしないので調理器具が鍋と包丁しかない、調味料に至ってはめんつゆ一発…工夫のためのインフラがそもそも揃ってないのだ。

世の中の貧乏人に、料理上手が多くいるとは思えない。貧乏ゆえに扱う食材も限られ、炒める茹でる調味料は塩かめんつゆのみ、という人の方が主流なのではなかろうか。
キッチンペーパーは食べられないし、尻を拭くには単価が高い。


そんな料理無精人にとって、これらの節約料理の道は敷居が高く、食に深いこだわりをもつ人間だけが通ることのできる道と言えよう。



ならば、料理無精の貧乏人のとる道とは…?


私の場合は、むしろろくなものを食わずに生活する。


金がないとはいえバイト代の入る月半ばだけは、私も多少金銭に余裕ができる。それまで中途半端にものは食わずにひたすら食への意欲を高め、来るべき日に何を食べるかを想像しながら腹をグルグル鳴らす。


中途半端にお金を節約して凌ぐぐらいならいっそ他のことに全部使っちゃって、後の楽しみをより楽しいものにしようという刹那系男子の行き様である。


また空腹のなか想像する食べ物は決して豪華なものではなく、B級グルメでもない。
至って普通の、安価で提供されているファーストフードだったり、はなまるうどんだったり、両手一杯のコンビニおにぎりとお茶だったりする。


日頃食べているちょっと好きな食べ物をなんの気兼ねもなく食べる、そんな想像に涎がどろどろ出てしまう。普通であることの良さを腹で感じる。


貧乏空腹状態での私の心理はこんな感じなんだけど、これは塀の中の囚人がシャバに抱く郷愁と同じなのではなかろうか?
空腹を紛らわそうとある漫画を読んでいたら、そんなことに気づいた。

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お金がない私の、お金を使わないと回収できない欲

・ご飯が食べたいな
・漫画が読みたいな

という欲求、加えて

・料理技術やうんちくがない

という個人的な希望を全て拾ってくれる漫画がこちら


土山しげる「極道めし」


刑務所内最大の飯イベント、正月のおせち料理をかけて囚人達の熱いバトルが繰り広げられる、という話。囚人たちは各々「人生で最高に上手いと思った飯の話」を披露し、一番食いたいと思わせたやつが勝ちというバトル方式なんだけど、出てくる飯のチョイスが凄く良い。

駅の立ち食いそば、フルーツ缶詰の汁、おにぎり、野沢菜など…日常的に食べているなんてことない食べ物をが最高に旨い飯に変わるシチュエーションを語ることで、グルメとして特化しない普遍性のある食欲として、周りの囚人と読者に訴えかけてくる。



今食べることができない「普通の食事」への思いを塀のなかで膨らませ「ムショから出たら○○を一番に食べに行くで!」と意気込む囚人たちが、今の自分と重なってますます腹が減る。



グルメ漫画は独自の調理法や素材の活用によって味の深みを生み、その旨さを絵と形容修飾によってどれだけ読者に伝えられるかが肝だとするならば、それには表現の限界が常につきまとう。

味覚を文章で伝えきるのは少し無理がある。読者の経験と想像に委託されている部分が大きく、まして大して旨いものを食ったことがない人間には、その料理がどんな味のコントラストを生んでいるのか想像すらできない。

そのなかで、誰でもその旨さを共感できる土山しげるのめし漫画は、貧乏人の空腹に訴えかける力がもっとも強く、またグルメとは呼べない日々の食事の素晴らしさを教えてくれる漫画でもあると思う。

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(欄外)刑務所のおせち料理

花輪和一「刑務所の中」の場合


土山しげる「極道めし」の場合

雑煮と甘味は共通。米物が出たり年越しそばがカップ麺だったり、刑務所ごとに色々とバリエーションがあるらしい。結構旨そう。


三ヶ日もなかなか豪勢なものが出るらしいが、古い米を使った銀シャリよりいつもの麦飯の方が旨いなんてこともあるらしい

「臭いめし」というのは過去のイメージで、今ではその辺の貧乏学生より良いもの食べてるぐらいが主流らしいよ…腹へった

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