忍者ブログ

魍魎拳

漫画の感想の置き場

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

現在、新しいコメントを受け付けない設定になっています。

金田一蓮十郎の勇者学

「ジャングルはいつもハレのちグゥ」でお馴染みの金田一蓮十郎先生。その可愛らしい絵柄と邪悪なギャグセンスに、連載当時小学生だった私は衝撃を受けました。


あれから十余年、今再び金田一蓮十郎漫画が私のなかで熱いコンテンツとして盛り上がりつつあります。


金田一蓮十郎は2012年、ヤングガンガンにて「ニコイチ」(単行本全10巻)の連載を終了。現在講談社デザートにて「ライアー×ライアー」、ヤングジャンプにて「あるみちゃんの学習帳」を連載しています。

上記の作品に共通する要素、それは

・主人公が二つの人格を演じる二重生活を送るということ

・苦難を乗り越え最終目的の達成に向け少しずつ前進していくという、RPGに似たストーリー

・爽やかな文章とえげつないギャグの両立

金田一蓮十郎作品には王道とも言うべきポップな面白要素がいくつも含まれていて、それはさながら肉体精神共に優れたRPG的勇者にも似た最強の万能性を持ったコンテンツだと思うのです。

具体的な例として、今さっき読み終わった「ニコイチ」を取り上げたいと思います。



さてこの「ニコイチ」という物語はどんな話なのかというと、

大体こんな感じの話です。主人公(男)は事故で亡くなった昔の恋人の息子・崇を預かり、女装技術を磨いて母親として何も知らない崇を育て上げることを決意。会社員(男)と母親(女)の二役を生きる二重生活を送ることになる…という話です。

相変わらずの凄まじい苦労人設定ですね。


この物語、最終的なゴールは第一話から最終話まで変わらず「主人公が、何も知らない息子の崇に全てをカミングアウトして理解を得ること」です。

立ちはだかる様々な困難(狙っていたはずの女性に女装時の姿を好かれてしまう)

(息子にレズビアンと勘違いされるetc)

を乗り越えて徐々に理解者(仲間)を増やしていく主人公

また息子へのカミングアウトが成功したかと思いきや、息子の受けたショックは見た目以上に大きく遂には息子が家出しまう事態になるなど

ラスボス(カミングアウト)の強大さを改めて示す負けイベントがあったり、ラスボスを倒したかと思いきや真の敵は別に存在し、真の平和を目指し物語がさらに進んでいくような、この構成。さながらDQ6のようなRPG展開です。

この王道とも言える物語構成に独特の面白さを加えるのは「ハレのちグゥ」時代からの金田一蓮十郎の持ち味、毒気です。

話が進むごとに到底解決できそうにない誤解やいざこざを主人公にぶつけまくり、ひたすら精神的課題を植え付ける、それが金田一蓮十郎漫画の定番です。

こういったえげつないストレスを主人公に与える一方で、シリアスな場面では非常に重みのある台詞が飛び交います。



毒のある人、性格の歪んだ人、頑固の人、偏屈と呼ばれるこれらの人間の口から吐き出される純粋な言葉は、さながら岩清水のように澄みきった珠玉の台詞足り得る、と私は思っています。

松本零士、宮崎駿、西原理恵子、遠藤浩輝、ジョージ秋山、古谷実や三島由紀夫など、偏屈な精神を持つ人間ほど、ろ過にろ過を重ねた清らかな言葉を生みます。

その純度は、綺麗事や感動ものが大嫌いな屑の私がうっかり感動してしまうほどです。

金田一蓮十郎もまた強力な毒を持ちながらも非常に純粋な言葉を産み出す性質の人間なのだと思います。
女装生活をする父親というえげつない設定をギャグとして扱う一方で、主人公の抱える人生の問題には一つ一つ丁寧な解決策を提示しており、物語全体を通して非常に真面目で清々しい雰囲気を醸しています。




王道的なストーリー構成、変身願望を鷲掴みにする二重生活という設定、そして邪悪なギャグと清廉な台詞…非の打ち所のない勇者さながらの万能の力強さを持つ彼女の作品に、今後も注目していきたいと思います。

そういや「ハレのちグゥ」にもRPGチックな話がありましたね


拍手

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

プロフィール

HN:
拳死狼
性別:
非公開

カテゴリー

P R