「百合が嫌いな男はいない」とか
「ホモが嫌いな女はいない」とか言う人もいますが、まぁ百合嫌いな男もいるしホモ嫌いな女もいますよね。
どっちにしろそれなりに魅力があるものだからこそそんな自信を込めた発言が出るわけで、何となくわからんでもないなぁなんて思ったりします。
男が百合を好むとされる理由
みんな大好き美少女とみんな大好き美少女とが絡み合っている画は、美味しいものと美味しいものとの合体、チーズインハンバーグや『CAPCOM vs SNK』みたいなもので、美味しいに決まってるし嫌いな人はそもそもベジタリアンか格ゲーやったことない人ぐらいのもので
女がホモを好むとされる理由も、その美少年バージョンで、双方非常に単純明快な論理で構成されてんだと思います。
+に+を×すれば、そら+やで、と
またその百合ホモの世界のなかでは「綺麗なものしかいない」状況ってのが重要視されてんじゃないかなと思っていて、「綺麗ではないもの」は徹底的にその世界から排除されてるんですよね。
百合の場合は野郎が、ホモの場合は女性が全く出ない、割り込む余地が全くない純度100%な世界観が必須なわけですね。綺麗な美少女、綺麗な美少年以外はあってはならない存在なんす。
これは私のちょっとした偏見ですが、百合が好きな男の人は、同じ性別であるはずの野郎を嫌っているんじゃないかなぁなんて思ってます。自分の大好きな美少女が野郎とくっつくのが許せない的な、そんな気持ちが百合好きに走らせているのではないかと。よって百合好きの男の人は野郎同士が絡むホモ系とかすげぇ嫌いなんじゃなかろうか、など。
さて野郎の私が百合系を好むか、また野郎同士が絡むホモっぽいものを嫌っているかというと、とても微妙です。
というかどっちもそこそこ好きだしぼちぼち苦手なんですよね。そんなディープなものは読まずに、ソフト百合・ソフトホモぐらいのものをまったり享受しています。
例えば百合系だと平尾アウリの『まんがの作り方』とか好きです。
女性の漫画家二人と間に入ってくるアシスタント女性の三角関係を描いた漫画ですが、イチャコラと依存しあってぐずぐずな合体生物みたいになった二人の間にグリグリ割って入ろうとするアシスタントさんや周りの人の葛藤とか、読んでてヒリヒリします。
吉田秋生の『ラヴァーズ・キス』収録の『彼女の嫌いな彼女』
ヒロインはヤンキー風の先輩(♀)に憧れているんだけど先輩はヒロインの姉に思いを寄せていて、ヒロインは姉のことを人として好きになれずにモヤモヤする、というこれまたヒリヒリする話があります。青いっすねぇ。
など、そんなに多くは読んでないですね
思いついたのはこんぐらいです
一方、ホモっぽい漫画ってなんか結構持ってるんですよね。それも少女漫画だけでなく少年・青年向けの雑誌に載ってるやつもぼちぼち
例えば三宅乱丈の『pet』
「ヤマ」と呼ばれる自分の中で最も良い記憶を分け合った超能力者と「ペット」のコンビがいがみ合う、サイキック・サスペンスっす。
記憶を分け合った人間同士の絆の深さ、危険なまでの精神依存が非常にホモホモしく、物語全体に不安定な怪しさが漂っていて面白いです。男達の嫉妬と愛憎と独占欲の応酬、まともな女性はほぼ出ません。
売野機子『MAMA』
聖歌隊育成学校の寮で渦巻く少年達の葛藤、かなりエグみのある話。少年達はみな母親関連で何かしらの心の傷を抱えていて、その傷を隠し癒すために必要以上に馴れ合ったりその果てに肉体関係に至ったりなど、竹宮恵子や萩尾望都の世代に通じる浪漫少年愛漫画。
少年達は寄宿学校で修練を積み、その声が神に見初められると「天使」へと進化し究極の美声をだせるようになるんだけど二ヶ月以内に必ず死を迎えるという、怪しい設定が少年達の儚さを高めています。10~1 5歳の少年達が天使になることを目指して、死へ向かって進んでいく、この破滅的な物語、面白いです。
ふみふみこ『ぼくらのへんたい』
女装が趣味で心も女な男の子と、母の精神療養のために死んだ姉の姿を真似る男の子と、知り合いの男性に性的関係を強要されていた男の子。三人の男の娘が運命的な出会いを果たし同族意識と同族嫌悪に揺れる、みたいな話。
志村貴子の『放浪息子』に似てますがですが、少し虐めや性、家庭崩壊などダークな面も強いです。
ソフトなホモなんで出てくる男たちも綺麗なもんで、まぁ美少年と美少年が絡んでるのは見ててホホォ…と思うぐらい、なんか綺麗なもんが絡んでんなぁぐらいの感傷です。
これらの作品に通じることとして、百合ホモ問わず、登場人物達の精神や人間関係が非常に脆く不安定であるってことが挙げられます。登場人物は往々にして心に弱味を持っていたり自分に自信をもっていなかったりで、気の迷いともとれる倒錯の結果同性愛的なものに行き着いています。
性倒錯って思春期の悩みの終末点だと思うんすよね。
そんな壊れやすく背徳的な心理描写が怪しくソフトサイケを聴いてるような不安定さが楽しいのです。ソフトサイケ青春パンクです。
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さて
自分が百合漫画をあまり読まず、ホモい漫画を多く読む理由はなんなんだろうと考えると、それは「共感」と「フィクション性」という物語を読む上で私が感じる面白要素のバランスによるものなんだと思います。
百合って野郎の私にとっては完全別世界の100%フィクションで、それはもはやファンタジー並みに実感共感を伴わない驚きの世界なんすよね。♀しかいない世界の話、「自分にもこんなこと起こるかもしれない」とか「この気持ちわかるわー」みたいなことがあまりないのです。驚きや異世界に浸る非現実への逃避、その点では少女漫画と同じ感覚で読んでますね。
一方ホモはどうか。
その世界には男しかいなくて、言ってしまえばホームグラウンドなわけです。なので登場人物達の感じてる背徳感とか、ギリギリ想像できる範囲内なんすね。少年達の同性愛は傷つきやすい思春期の葛藤の行く末とすれば、そのホモは質の高い青春ものともとれると思うんす。
またこれは私に限った話なんですが
売野機子の『MAMA』や萩尾望都の『トーマの心臓』なんかは閉鎖的な男子寄宿舎の中の話で、私も中高一貫男子寮の学校に通っていたので似たような事例を見たことがあったり経験しそうになったりと、その手の話にはギリ共感できるんですよね。
とはいえ野郎同士の愛情ってのはさすがに抱いたことのない感情なので、そこはやっぱり自分にとって非現実的なフィクションなんです。
フィクションの面白さって自分の中の常識とか想像できる範囲からどれだけ物語の内容がかけ離れているか、その距離の絶対値に関係してるんだと思うんすね。
百合は私の範疇から激しくかけ離れているが共感はできない。ホモは私の範疇からかなりぶっ飛んでいながらも共感・理解できる部分もある。そのバランスが私にとっては丁度良く面白く読めるんだと思います。
そういや高校の同級生でホモ(女装が趣味)の人がいたんですが、彼は男の娘系の話の『ゆびさきミルクティー』を絶賛していました。彼はあの漫画をフィクション性よりも共感で読んでたんじゃないかなぁなんて思います。
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まぁでも百合嫌いな男もホモ嫌いな女も、百合嫌いな女もホモ嫌いな男も世の中にはたくさんいるし、生理的に無理って感じてる人も多いはずなので、冒頭のあの文句を見ながら私も自分の趣味・好きな漫画を押し付けたりしないようにしたいなぁなんて思いましたよ。
あと私は断じてホモではないです。
これは強調しておかないとマズイ。
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